完璧にギターのチューニングをしたのに、いざ弾いてみるとなんかおかしい・・。そんな経験はありませんか?
チューニングが合っているギターを弾くと気持ちがいいものですが、チューニングが合っていないギターの場合、どんなに上手にギターを弾いても心地よい演奏にはなりませんよね。
ギターはチューニングがピタッと合わない楽器なのですが、原因を知って対策すれば納得できるチューニングができます。
そこでこの記事では、ギターのチューニングが合わない原因と対策、チューニング方法について解説していきます。
ギターのチューニングが合わない、すぐに狂う理由
ギターのチューニングとは、ギターに張られている6本の弦を正しい音程(=音の高さ)に合わせることですが、なかなかピッタリ合いません。合ったと思ってもすぐに狂ってしまいます。
ギターのチューニングが合わない、すぐに狂ってしまう最大の理由は、『ギターはチューニングが合わない楽器』だということです。
えっ? そうだとしたら、もうどうにもならないじゃないか! と、思うかも知れませんが、実はそうでもないのです。
確かにギターはチューニングが合わない楽器なのですが、その原因を知って対策すれば、納得できるチューニングができるようになります。
そこでまず、ギターのチューニングが合わない原因を解説していきます。
ギターのチューニングが合わない原因
ギターのチューニングが合わない原因は、ギターを弾く人の努力によって改善できるものと、ギター本体に原因があるため簡単には改善できないものに分けられます。
<努力によって改善できる5つの原因>
(1)チューニングのやり方が間違っている
(2)ギターの弦が新しい、または古い
(3)弦を押さえる力が強すぎる
(4)カポタストを使っている
(5)湿度などの環境が変わっている
<簡単には改善できない3つの原因>
(1)ネックがストレートではない
(2)オクターブ・チューニングが狂っている
(3)フレットの間隔が狂っている
それぞれの原因について、解説していきます。
努力によって改善できる5つの原因
(1)チューニングのやり方が間違っている
ギターのチューニングが合わない原因で多いのが、チューニングのやり方が間違っていることです。
ギターのチューニングは、音程を上げながら合わせていくのが基本です。高くなり過ぎたときは、いったん合わせたい音程よりも下げてからやり直します。
なぜならば、ギターの弦は糸巻き(ペグ)を回してゆるめる(音程を下げる)と、弦の張りにムラができてしまい音程が安定しなくなるからです。
フォークギター各部の名称が書かれた下のイラストを見てください。弦は、ブリッジピン、サドル、ナット、糸巻き(ペグ)で固定されています。
弦をゆるめていくときに、これらの部位でひっかかりがあると、思った通りに音程が下がりません。適切に音程が下がらなかった場合、演奏中に音程が下がることになります。その結果、チューニングが狂ってしまうのです。
このような理由から、チューニングは音程を上げながら合わせていくのが基本なのです。
(2)ギターの弦が新しい、または古い
新しいギターの弦は伸びやすいので、張り替えた直後からどんどん音程が下がっていきます。
ナイロン製の弦が張られているクラシックギターは、弦を交換した後1週間ぐらいはチューニングが安定しません。ナイロンは伸びやすい性質があるからです。
フォークギターやエレキギターにはスチール(金属)製の弦が張られていますが、ナイロン弦ほどではないもののやはり伸びていきます。
新しい弦を張った後は、弦の伸びが安定するまで、頻繁にチューニングをするようにしましょう。
弦が古い場合も、チューニングが安定しません。
なぜならば、古い弦は手の脂や汚れがついていたり錆(さび)ていたりするので、弦が均一な状態ではなくなっているからです。
正確にチューニングできなくなってきたら、弦を新しいものに張り替えましょう。
(3)弦を押さえる力が強すぎる
ギターは、弦を押さえる力が強すぎるとチューニングが合わなくなります。
なぜならば、弦が伸ばされて音程が高くなるからです。
弦を押さえていないときは、弦は指板の上で直線的に張られています。
ところが、力強く押さえると弦が伸ばされるので、音程が高くなってしまいます。
音程が高くならない押さえ方が理想的です。
しかし、押さえる力が弱すぎると、音がビビってしまいます。反対に強すぎると、音程が高くなってしまいます。ちょうどよい力加減が必要です。
同じギターでも力加減の調節が必要です。太い弦は強めに、細い弦は弱めに押さえなければなりません。
弾き方によっても力加減の調節が必要です。強く大きな音を出すときは強めに、弱く小さな音のときは弱めの力で押さえます。
また、押さえるフレットによっても力加減の調節が必要です。1フレット目はかなりの力が必要です。弦高(弦と指板との間)が高いギターは、ハイポジション(ボディに近い側のフレット)になればなるほど力が必要です。
さらに、ギターのタイプによっても力加減が違います。エレキギターに比べ、フォークギターは強い力が必要です。クラシックギターは、エレキギターとフォークギターの中間ぐらいです。
ギター上級者になると、ネックを握った瞬間に大体の力加減がわかるようになります。熟練の成せる業です。
(4)カポタストを使っている
ギターは、カポタスト(ネックに装着して移調する道具)を使ってもチューニングが狂います。
カポタストは、音がビビらないようにするために、かなりの力で弦を押さえています。その結果、音程が高くなってしまうのです。
実際にチューナーを使って実験してみました。
全ての弦を開放(0フレット)で完璧にチューニングした後に、カポタストを5フレットに装着し、それぞれの弦を弾いてチューナーに表示される音程を確認します。
すると、全ての弦の音が規定の音程よりも高くなっていました。
カポタストを使ってギターを演奏するときには、カポタストを装着した状態でもチューニングする必要があります。
(5)湿度などの環境が変わっている
ギターは、環境が変わることでもチューニングが狂います。
なぜならば、ギターは木材でできているため、温度や湿度などの変化によって伸び縮みするからです。
1日の内でも環境は変わるので、チューニングは狂います。もちろん、ギターを弾けば弦が動くので、チューニングは狂います。
ですから、ギターを弾き始める前だけでなく、ある程度ギターを弾いた後でも、必要に応じてチューニングをするようにしましょう。
簡単には改善できない3つの原因
(1)ネックがストレートではない
ネックがひどく反っているギターは、チューニングが合わなくなります。
通常、ギターのネックは、ストレートに作られています。
下図は、ギターを横から見たイラストですが、ネックが真っ直ぐになっていることがわかりますね。
ところが、木材でつくられているネックは、弦を張っていると「順反り」といってヘッド側が上がってきます。
順反りのネックは、弦高(弦と指板との間)が高いのでわかります。
イラストは誇張しているのですが、このような状態のネックになってしまった場合は、チューニングが合いません。
また、まれに「順反り」の逆に反る「逆反り」になることもあります。このようなネックの場合、音が詰まってしまうので、チューニングどころではありません。
フォークギターやエレキギターは、ネックをストレートに直す方法があります。トラスロッドといって、ネックの中に入っている鉄の棒を調節するのです。
クラシックギターは、ネックにトラスロッドが入っていないので調節できません。
順反りを直すには、右回り(時計回り)にトラスロッドを回します。反対に、逆反りを直すには左回り(反時計回り)に回します。
最初に回す角度は10〜45度ぐらいです。あとは様子を見ながら少しずつ回していきます。
素人でも慎重に行えば失敗はありませんが、あくまでも個人の責任でやってください。心配な方は楽器店にお願いしましょう。
(2)オクターブ・チューニングが狂っている
オクターブ・チューニングが狂っていると、チューニングが合いません。
オクターブ・チューニングが狂っている状態というのは、開放(0フレット)の音程に比べて1オクターブ高い12フレットの音程が、高かったり低かったりすることをいいます。
ギターは、弦を押さえない開放(0フレット)の音と12フレットの音が1オクターブ違います。
たとえば、3弦の0フレットは”G”の音ですが、3弦の12フレットの音は1オクターブ高い”G”です。
オクターブ・チューニングが狂っていると、ハイ・ポジション(ボディに近い方)ではチューニングが合っていないことに気がつきます。
エレキギターは、ブリッジ上のサドルを動かすことで調整することができます。
開放より12フレットの音程が低い場合は、サドルをネックの方へ動かします。反対に、開放より12フレットの音程が高い場合は、サドルをネックから遠ざけるように動かします。
フォークギターやクラシックギターでは、サドルを動かすことができません。調整するためには、サドルをやすりで削ることになります。
ただし、失敗した場合は元に戻せないので、新しいものと交換しなければなりません。あくまでも個人の責任でやってください。心配な方は楽器店にお願いしましょう。
(3)フレットの間隔が狂っている
フレットの間隔が狂っていると、チューニングが合いません。
安価なギターの中には、フレットの間隔が不適切なために正しいチューニングができないものがあります。
最近では安価なギターであってもクオリティが高くなっているため、明らかにフレットの間隔がずれているものは少なくなりました。
しかし、それでもおかしいものは存在します。いわゆる、作りが甘いギターです。
このようなギターは、チューニングが合うように調整することはできません。悪いものを手にしてしまったとあきらめましょう。
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ここまで、ギターのチューニングが合わない原因を解説してきましたが、ご理解いただけましたでしょうか。
ここからは、『ギターはチューニングが合わない楽器』だということを前提として、納得できるチューニング方法について解説していきます。
納得できるチューニングの方法
ギターの弦を完璧にチューニングすることは不可能です。
なぜならば、フレットを押さえて音程を変えるギターは、構造上100%チューニングを合わせることができないからです。また、木製品のギターは環境によって変化することや、弦が伸びたり錆びたりすることなども、100%のチューニングができない要因です。
では、「ギターは正しいチューニングができない」とあきらめるしかないのでしょうか。答えは「いいえ」です。
実は、チューナーがもっている問題点を知り、チューナーに頼らないチューニング方法をすることで、納得できるチューニングができるようになります。
チューナーに頼ったチューニングの問題点
チューナーに頼ったチューニングには、2つの問題点があります。
○開放弦でチューニングすることの問題
○耳が鍛えられないことの問題
ひとつずつ解説します。
○開放弦でチューニングすることの問題
チューナーを使ったチューニングでは開放(0フレット)音を合わせますが、開放の音とフレットを押さえた音ではわずかに音程が違うのです。
チューナーを使ってどんなに正確にチューニングしても、弦を押さえたときに違和感があるのはそのためです。
これは、ギターがもっている構造上の特徴です。ナットの調整である程度は改善できますが、誤差を0にすることはできません。高級なギターは、この辺りの作りの精度が高いのです。
これが、チューナーでチューニングすることの第一の問題点です。
○耳が鍛えられないことの問題
チューナーを使ったチューニングに頼っていると、音程の変化を感じ取る耳が鍛えられません。
わずかに音程がずれている2つの音が鳴っていると、音のうなりが起こります。このうなりは、チューニングをすることによって無くすことができます。
2つの音程がぴったり合うと今までのうなりが消えて、まるで1本の糸が真っ直ぐ伸びているように、1つの音だけがスーッと聞こえるようになります。
耳が鍛えられていると、2つの音のうなりをハッキリと聞き分けられるようになります。
ギタリストが演奏中に、糸巻き(ペグ)を回してチューニングしていることがあります。これは、耳が鍛えられているために、わずかな音程の変化に気づき、瞬時に調整しているのです。
チューナーに頼ったチューニングをしていると、耳が鍛えられないので、わずかな音程の違いに気づくことができません。
その結果、チューニングが合っていないことにも気づくことができないのです。
ハーモニクスを使ったチューニングの方法
ハーモニクスを使ったチューニングをすることで、チューナーに頼ったチューニングの問題を解決することができます。
ハーモニクスとは、左手指を軽く弦に触れた状態で弦を弾き、その瞬間に左手を離して倍音(1オクターブ上の音など)を出すことです。
○ハーモニクス・チューニングの手順
(1) 基準となる6弦の音程をチューナーなどで合わせる。
(2) 5弦のチューニング:6弦5フレットと5弦7フレットのハーモニクス音が同じになるように5弦を調節する。
(3) 4弦のチューニング:5弦5フレットと4弦7フレットのハーモニクス音が同じになるように4弦を調節する。
(4) 3弦のチューニング:4弦5フレットと3弦7フレットのハーモニクス音が同じになるように3弦を調節する。
(5) 2弦のチューニング:6弦7フレットと2弦12フレットのハーモニクス音が同じになるように2弦を調節する。ここは、1オクターブ音程が違うので、音のうなりをよく聞き分けてください。
(6) 1弦のチューニング:2弦5フレットと1弦7フレットのハーモニクス音が同じになるように1弦を調節する。5弦7フレットと1弦12フレットのハーモニクス音でも調節できます。
2つの音程がずれていると音がうなりますが、2つの音程がピッタリ合うと、うなりがなくなって1つの音だけがスーッと通るようになります。
例として、6弦5フレットと5弦7フレットのハーモニクス音で5弦の音を合わせている音源(約41秒)を作ったので、音のうなりがどのようなものなのかを聞いてください。
ハーモニクス音は全部で5回(5・6弦合わせて10回)鳴ります。
1回目:5弦の音を上げながら6弦の音と合わせている
→音のうなりがなくなる
2回目:さらに5弦の音を上げている
→音のうなりがはじまる
3回目:5弦の音を下げながら6弦の音と合わせている
→音のうなりがなくなる
4回目:さらに5弦の音を下げている
→音のうなりがはじまる
5回目:5弦の音を上げながら6弦の音と合わせている
→音のうなりがなくなる
このようにして1〜6弦をチューニングしていきます。
この作業を何回か繰り返すと、チューニングが安定してきます。
○ハーモニクス・チューニングの確認手順
ハーモニクス・チューニングは下図のような方法でもできます。
(1) 6・5弦の確認:6弦12フレットと5弦7フレットのハーモニクス音が同じか確認する。
(2) 5・4弦の確認:5弦12フレットと4弦7フレットのハーモニクス音が同じか確認する。
(3) 4・3弦の確認:4弦12フレットと3弦7フレットのハーモニクス音が同じか確認する。
(4) 6・1弦の確認:1弦12フレットと6弦12フレットのハーモニクス音が同じか確認する。
(5) 2・1弦の確認:1弦7フレットと2弦12フレットのハーモニクス音が同じか確認する。
このハーモニクス・チューニングの場合、音程が1オクターブ違うので、音のうなりをしっかりと聞き分けてください。6弦・1弦12フレットのハーモニクス音は2オクターブ違います。
これらの作業を行うことで、6本の弦全体のバランスがよくなり、安定した音程で演奏することができます。
○ハーモニクス・チューニングの利点と難点
ハーモニクス・チューニングの利点は、耳が鍛えられることです。
チューナーでのチューニングは、音が合ったかどうかを目で確認しますが、ハーモニクス・チューニングでは耳で確認します。
わずかな音程の違いを感じ取りながら行うハーモニクス・チューニングを日常的にやっていると、わずかな音程の違いに気づけるようになります。
音程の違いがわかるようになれば、曲を聞いてコピーする「耳コピ」もできるようになります。
また、ローポジションからハイポジションまで指板上の仕組みがわかるので、様々な演奏に応用できます。
つまり、日々ハーモニクス・チューニングをすることで、演奏能力の向上も期待できるのです。
ハーモニクス・チューニングの難点は、2弦と3弦のバランスをとることが非常に難しいことです。
その理由は、平均律や純正律などの用語を使わないと説明できないのでここでは解説しませんが、この問題をクリアしないと納得できるチューニングができないことになります。
そこで、どうしても2弦と3弦のバランスがとれない場合は、3弦4フレットの音と2弦開放の音で2弦を合わせるようにしてください。その方がチューニング誤差が小さいので、6本の弦をバランスよくチューニングすることができます。
まとめ:ギターのチューニングが合わない・すぐ狂う
完璧にギターのチューニングをしたのに、いざ弾いてみるとなんかおかしい・・。
そんなチューニングの悩みを解消し、納得できるチューニング方法を解説してきました。
ギターのチューニングが合わない最大の理由
ギターのチューニングが合わない原因
・努力によって改善できる5つの原因
・簡単には改善できない3つの原因
納得できるチューニングの方法
・チューナーに頼ったチューニングの問題点
・ハーモニクスを使ったチューニングの方法
チューナーでのチューニングやハーモニクス・チューニングの「良いとこ取り」をして、ぜひチューニングの悩みを解消してください。
この記事があなたの一助になれば幸いです。
最後までお読みくださり、ありがとうございました。
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