ブルースという音楽ジャンルでは、ギターのボトルネック奏法が多用されます。
サウンドに独特の味わいがあり、どこかもの悲しさを感じますね。
しかし、特徴的なサウンドをもつこのボトルネック奏法は、今では様々なジャンルの音楽で活用されています。
そこでこの記事では、ボトルネック奏法のやり方とコツ、チューニングの方法について解説します。
どうぞ最後までお読みください。
もくじ
ボトルネック奏法とは
ボトルネック奏法は、スライドバーという棒を使って演奏するギターのテクニックです。そのため、スライドギターともいわれます。
なぜ「ボトルネック奏法」と呼ばれるようになったかというと、ウィスキーなどのビンの首を切り、その部分を指に通したり手で持ったりして演奏したからです。

ブルースは、19世紀にアメリカ南部で生まれました。
当時のアメリカは人種差別が公然と行われていたため、悲しみを意味する「ブルー」の複数形である「ブルース」という音楽ジャンルができたといわれています。
ボトルネック奏法の枯れた響きが、どことなく寂しさを感じさせるのは、このような歴史があるからなのかもしれません。
ボトルネック奏法のやり方とコツ

ボトルネック奏法は、普通の弾き方と違い、左手でスライドバーを操る演奏法です。
具体的には、弦がフレットに触れない程度の力でスライドバーを弦に当て、左右に動かしながら音を出します。
弦がフレットに当たらないので、無段階にピッチを変化させることが最大の特徴です。
ボトルネック奏法には、ギターを膝の上に上向きに置いて演奏するなど特殊なやり方もあります。
しかしここでは、普通にギターを抱えた状態で行うボトルネック奏法のやり方を解説します。
- スライドバーを挿す指を決める
- 無駄な音をミュートする
- スケールを横に見る
- ピッチを安定させる
- 音の長さをコントロールする
- ビブラートを入れる
- ゴーストノートを入れる
スライドバーを挿す指を決める
スライドバーを挿す指は、人差し指・中指・薬指・小指のどれでも構いませんが、それぞれにメリット・デメリットがあります。

どの指にスライドバーを挿すか迷った場合は、全ての指で演奏してみて、一番やりやすい指を選べばいいでしょう。
各指についてもう少し解説を加えます。
・小指

ブルースのギタリストは、スライドバーを小指に挿すことが多いようです。
人差し指・中指・薬指が自由になるので、スライドバーを挿していない3本の指を使ってギターを弾くことができます。
人差し指〜薬指が空いているので、ナット側のミュートはやりやすいです。
スライドバーを支えるのは薬指だけになるので、少し安定性に欠けます。
小指は他の指に比べてコントロールがしづらいので、慣れが必要です。
小指の場合は、基本的につけ根までスライドバーを挿します。
・薬指

ロックのギタリストは、スライドバーを薬指に挿すことが多いようです。
小指と中指でスライドバーを挟むことができるため、安定した演奏ができます。

ナット側のミュートはやりやすいです。
薬指の場合は、基本的に第2関節までスライドバーを挿します。
・中指

中指にスライドバーを挿すプロのギタリストは少数派です。
薬指と人差し指でスライドバーを挟むことができるため、安定した演奏ができます。
ナット側のミュートは人差し指1本だけでやりますが、人差し指はコントロールしやすいのでやりにくさはありません。
中指の場合は、基本的に第2関節までスライドバーを挿します。
・人差し指

人差し指にスライドバーを挿すプロのギタリストも少数派です。
人差し指はコントロールしやすいので、正確な音程を出しやすい点では有利です。
しかし、ナット側のミュートができないので、ミュートは右手だけでやることになります。
人差し指の場合は、基本的に第2関節までスライドバーを挿します。
無駄な音をミュートする
ボトルネック奏法では、ピッキングしない弦にもスライドバーが当たっているので、無駄な音=ノイズが出てしまいます。それを消すために必要なのが、ミュートのテクニックです。
右手でのミュートは、弦をはじかない指や手のひらなどを使って行います。ピックを使って弾く場合は、指弾きよりもミュートがやりにくくなります。そのため、多くのブルース・ギタリストは、指弾きを選んでいます。
実際のやり方ですが、基本的に弦をはじかない指で隣の弦に触れてミュートを行います。
- 親指で弾くとき:人差し指や中指で細い方の弦をミュート
- 人差し指で弾くとき:太い方の弦を親指で、細い方の弦を中指でミュート
- 中指で弾くとき:太い方の弦を親指と人差し指で、細い方の弦を薬指でミュート


細い方の弦からはあまり大きなノイズが出ないので、実際に弾いてみて気にならないようであればミュートをしなくても大丈夫です。
しかし、太い方の弦はノイズが出やすいので、親指では常にミュートをするようにしましょう。
スケールを横に見る
ボトルネック奏法では、スケールを横に見ます。
通常の演奏では左手のポジションを固定してスケールを弾きますが、ボトルネック奏法ではスライドバーを横に動かして演奏するので、スケールを横に見るようにします。

ピッチを安定させる
ボトルネック奏法では、スライドバーを横に動かして演奏するので、ピッチを安定させることが難しくなります。
そのため、音程を聞き取る耳がとても大切になります。
また、スライドバーを垂直に当てることも、ピッチを安定させるために大切です。
・音を耳で聞く
正確なピッチはフレットの真上ではなく、わずかにナット側で出るのですが、誤差の調整をするためには音を耳で聞くしかありません。

ピッチが不安定だと感じたら、実際にフレットを押さえて音を出し、そのピッチに合うようにスライドバーの位置を調整するようにしましょう。
演奏中でも常に音を聞いてピッチを合わせていきますが、ピッチが上がりすぎないように注意します。
なぜならば、上がりすぎたピッチを戻すと、弾き間違えたように聞こえるからです。
動画を再生するとスピーカーから音が出るので、ボリュームに注意してください。
ピッチを上げながら正しいピッチに合わせると、弾き間違えには聞こえないので、あせらずに演奏することが大切です。
・スライドバーを垂直に当てる
スライドバーを弦に対して垂直に当てることも、ピッチを安定させるために有効です。

スライドバーを垂直に当てるためには、次の2つのことに注意するといいでしょう。
- 手首を曲げない
- 肘から指先までを平行移動させる
ビブラートをかけるときなどに、意図的に手首を曲げることがありますが、通常は手首を曲げないようにします。
また、肘から指先までを平行移動することで、スライドバーの角度が安定します。

このように、スライドバーを垂直に当てるために、手首や肘を平行移動させるようにしましょう。
音の長さをコントロールする
ボトルネック奏法では、音が長く伸びるのが特徴です。
しかし、全ての音が長く伸びるとメリハリのない演奏になってしまいます。
そのため、ボトルネック奏法では、音を短く切ることも大切なテクニックになります。
下の楽譜を見てください。赤い矢印の所で音を短く切ることで、メリハリのあるフレーズになります。

音を短く切るためには、右手を使います。
音が出ている弦に、右指で触れて音を切ります。
動画を再生するとスピーカーから音が出るので、ボリュームに注意してください。
右手を上手く使って音の長さをコントロールし、メリハリのある演奏を目指しましょう。
ビブラートを入れる
ボトルネック奏法では、ビブラートを入れることで独特な雰囲気が際立ちます。
ピッチの高い方に向かってビブラートをかけると不安定に感じられるので、ビブラートは基本的にピッチを下げたり戻したりすることを繰り返してかけます。

スライドバーを動かす幅を変えたり、速さを変えたりすることで、色々なニュアンスのビブラートをかけることができるのが、ボトルネック奏法の特徴です。

動画を再生するとスピーカーから音が出るので、ボリュームに注意してください。
いろいろなビブラートを試すと、ボトルネック奏法の楽しさが味わえるでしょう。
ゴーストノートを入れる
ボトルネック奏法では、ゴーストノートを入れることで、メリハリが効いたリズミカルな演奏ができます。
ゴーストノートとは、注意して聞いていないと存在に気づかないような、ノイズともアタック音ともいえるような音です。楽譜では、音符に「×」がついています。
たとえば、次の楽譜を見てください。

「×」がついた16分音符がゴーストノートです。
ボトルネック奏法では、ゴーストノートを次の楽譜のように弾くので、短い音が出ます。

動画を再生するとスピーカーから音が出るので、ボリュームに注意してください。
このように、ゴーストノートを入れることで、メリハリが効いたリズミカルな演奏になります。
ボトルネック奏法のチューニング
ボトルネック奏法は、レギュラーチューニングでも変則チューニングでも演奏できます。
それぞれにメリット・デメリットがありますが、ここではメリットについて解説します。
レギュラーチューニング
レギュラーチューニングでボトルネック奏法をするメリットは、スケールがわかりやすいということです。
通常の演奏をレギュラーチューニングで行っている人は、指板上のどこに何の音があるのかわかっているので、ボトルネック奏法をするために新たにスケールを覚える必要がありません。
たとえば、レギュラーチューニングでは、2弦の5フレットは「ミ」、1弦の5フレットは「ラ」です。
ところが、オープンGチューニングでは、2弦の5フレットは「ミ」ですが、1弦の5フレットは「ソ」です。
また、DADGADチューニングでは、2弦の5フレットは「レ」、1弦の5フレットは「ソ」になっています。
このように、変則チューニングではスケールを覚えるのが大変です。
しかし、レギュラーチューニングであれば、新たにスケールを覚える必要はありません。だから、ボトルネック奏法も通常の演奏と同じようにできます。
このことが、レギュラーチューニングでボトルネック奏法をする最大のメリットです。
変則チューニング
変則チューニングでボトルネック奏法をするメリットは、コード弾きができるということです。
なぜならば、変則チューニングでは、同じフレットの異なる弦を同時にはじくと、コードが鳴るからです。
ここでは、「オープンGチューニング」を例に解説します。
オープンGチューニングは、6弦から順にD-G-D-G-B-Dに合わせます。つまり、レギュラーチューニングから、6・5・1弦を1音下げたチューニングです。
このオープンGチューニングでは、開放弦を全部鳴らすとGコードが響きます。

下の指板図のように、オープンGチューニングでは、同じフレットをセーハする(同時に押さえる)と、メジャーコードが鳴ります。

そのため、次のようなフレーズをボトルネック奏法で弾くことが可能になります。

動画を再生するとスピーカーから音が出るので、ボリュームに注意してください。
このように、変則チューニングでボトルネック奏法をするメリットは、コード弾きができるということです。
まとめ:ボトルネック奏法!スライドギターのやり方とコツ
ここまで、ボトルネック奏法のやり方とコツを解説してきました。
ボトルネック奏法とは
ボトルネック奏法のやり方とコツ
スライドバーを挿す指を決める
無駄な音をミュートする
スケールを横に見る
ピッチを安定させる
音の長さをコントロールする
ビブラートを入れる
ゴーストノートを入れる
ボトルネック奏法のチューニング
レギュラーチューニング
変則チューニング
ぜひボトルネック奏法を習得し、哀愁の漂う音色を奏でてください。
この記事があなたの一助になれば幸いです。
最後までお読みくださり、ありがとうございました。
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