エレキギターのボディから飛び出している棒を、グニャグニャと動かして演奏している姿を見たことはありませんか?
あれが、アーミング奏法です。
アコギではできないアーミング奏法ですが、独特のニュアンスを演出できるので、やってみたいテクニックですね。
そこでこの記事では、アーミング奏法のやり方と注意点、装置の種類について解説します。
どうぞ最後までお読みください。
もくじ
アーミング奏法のやり方
アーミング奏法のやり方は、大きく分けて4種類あります。
- アーム・ダウン:ピッチを下げる
- アーム・アップ:ピッチを上げる
- アーム・ビブラート:ピッチを揺らす
- クリケット奏法:コオロギの鳴き声のようなサウンドを出す
それぞれ解説します。
アーム・ダウン
アームをボディに近づける、つまり押し下げることで、ピッチを下げるテクニックです。
アームを動かすスピードを変えることで、様々なニュアンスを出すことができます。
アーム・アップ
アームをボディから遠ざける、つまり引き上げることで、ピッチを上げるテクニックです。
あまり大きく上げると弦が切れることがあるので、注意が必要です。
また、ビブラート・ユニットが後方に動かないように固定されていて、アーム・アップができないタイプのものもあります。
アーム・ビブラート
アームを上下に素早く動かすことで、ビブラートをかけるテクニックです。
ゆっくりアーム・ダウンした後にアーム・ビブラートをかけたり、手の甲でアームを揺らしながらピッキングしたりすることで、様々なニュアンスを出すことができます。
クリケット奏法
クリケット奏法とは、アームの先端を叩くことでビブラート・ユニットを細かく振動させるテクニックです。
サウンドがコオロギの声に似ているので、クリケット(意味:コオロギ)奏法といわれるようになりました。
アームを後ろ側に固定して叩く方法もあります。アームを前で叩く方法と、後ろで叩く方法では、ニュアンスがわずかに変わります。
その他、ビブラート・ユニット本体を叩いたり、ギターのボディを叩いたりすることでも、クリケット奏法はできます。
4種類の奏法の動画
アーミング奏法の基本となる4種類の奏法を動画にまとめました。
動画を再生するとスピーカーから音が出るので、ボリュームに注意してください。
アーミング奏法の注意点
アーミング奏法をするときに注意することが2点あります。
- チューニングが狂う
- 不要な音が出る
それぞれ、原因と対処法を解説します。
チューニングが狂う
アーミング奏法は弦をゆるめたり伸ばしたりするので、必ずチューニングが狂います。
アーム・ダウンをして弦をゆるめると、ピッチが高い方にずれます。なぜならば、アームを戻しても、弦がナットなどにひっかかって完全に元にはもどらないからです。
反対に、アーム・アップをして弦を伸ばすと、ピッチが低い方にずれます。理由は、アーム・ダウンと同じです。
チューニングが狂ってしまうのはアーミング奏法の宿命なので、100%の対処法はありませんが、チューニングを安定させる方法はあります。
ナット潤滑剤などのグリスやオイルを、ナットやストリングガイドに塗る方法です。ナット潤滑剤がないときは、鉛筆の芯をヤスリで削り粉末状にしたものでも代用できます。
この方法は、アームを動かして「ピキッ」と音がする状態のときに効果が期待できます。
また、演奏中に明らかにチューニングが狂ってしまったときは、次のように対処します。
アーム・ダウンをしたときはピッチが高い方にずれるので、軽くアーム・アップやチョーキングをして、弦を引っ張ってやります。右手で弦を持って、軽く引っ張ってもいいでしょう。
すると、ピッチが低い方にずれるので、もとのピッチに戻りやすくなります。しかし、やり過ぎると逆効果になることがあるので、引っ張る力加減を調整しましょう。
アーム・アップをしたときはピッチが低い方にずれるので、軽くアーム・ダウンをしたり、ナットとペグの間の弦を押したりして、ピッチがもとに戻りやすくします。
このようなチューニングの問題を解決するために開発されたのが、「フロイド・ローズ」というビブラート・ユニットです。
「フロイド・ローズ」は、ブリッジとナットで弦を固定しているので、チューニングが狂いづらくなっています。
激しいアーミング奏法をするギタリストにはオススメのビブラート・ユニットですが、弦交換のときに弦の先端を切ったり、チューニングのときに6角レンチが必要になったりするなど、面倒なこともあります。
「フロイド・ローズ」は、チューニングが狂いづらいというメリットはありますが、扱いが複雑というデメリットがあることを理解した上で選ぶようにしましょう。
不要な音が出る
アーミング奏法をすると、不要な音が出ることがあります。特に、アームを激しく動かすと、太い方の弦から音が出てきます。
これは、弦をゆるめたり伸ばしたりすることで、弦がフレットに当たったり、ナットにひっかかったりするからです。
そのため、右手でアームを操るアーミング奏法では、左手のミュート・テクニックが欠かせません。特に、クリーントーンでの演奏では、不要な音が出ないようにしっかりミュートしましょう。
私が弾いている演奏例でも、ミュートしているのが確認できます。(下に動画があります)
ロックやヘビメタなどの激しい曲では、不要な音もねらったサウンドの一部になることがあります。
そういうときは、ミュートはあまり意識されません。アームをグニャグニャ動かして、ノイズをガンガンに出しています。
アーミング奏法を実現する装置
アーミング奏法とは、エレキギターについているビブラート・ユニットという装置を使って、ピッチ(音の高さ)を上下動させる演奏テクニックのことです。
ビブラート・ユニットからは金属製の棒が伸びていて、これを操ることでピッチを変化させます。
アーミング奏法は、ロックやロカビリー、カントリー、ブルースなど、様々な音楽ジャンルで使われます。
ビブラート・ユニットは長い歴史があり、その間に様々な機構が開発されましたが、現在ではおよそ次の3タイプがあります。
- シンクロナイズド・トレモロ・ユニット
- ビグスビー・ビブラート・ユニット
- フロイド・ローズ
それぞれ解説します。
シンクロナイズド・トレモロ・ユニット
この写真のようなフェンダー・ストラトキャスターが標準装備しているタイプは、「シンクロナイズド・トレモロ・ユニット」といいます。
アームを使ってブリッジを上下に動かすことでピッチを変化させます。
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ビブラートはピッチの高低を揺らすこと、トレモロは音量の大小を揺らすことなので、アーミング奏法はビブラートのテクニックです。
しかし、フェンダー社がビブラート・ユニットをトレモロ・ユニットといって製品化したので、ビブラート・ユニットもトレモロ・ユニットも同じものを指す言葉になっています。
ビグスビー・ビブラート・ユニット
この写真のタイプのビブラート・ユニットは、「ビグスビー・ビブラート・ユニット」といいます。
1940年代にポール・ビグスビー氏が考案したこのタイプは、ビブラート・ユニットの元祖的存在で、弦を留めているテールピースを回すことでピッチを変化させます。
ピッチの上下幅は「シンクロナイズド・トレモロ・ユニット」よりも小さいので、ロックなどの激しいフレーズは演奏できないことがあります。
フロイド・ローズ
この写真のタイプのビブラート・ユニットは、「シンクロナイズド・トレモロ・ユニット」を改良して1970年代に開発された「フロイド・ローズ」という装置です。
ブリッジとナットで弦を固定しているので「ロッキング・ビブラート・ユニット」ともいわれ、チューニングが狂いづらくなっています。
ピッチの上下幅が大きく、他のビブラート・ユニットでは表現できない驚異的な演奏を可能にしています。
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ここで紹介したビブラート・ユニット以外にも様々なタイプがありますが、ユニットから伸びている金属の棒を操ってピッチを変化させるという点は同じです。
そのため、1つのタイプの使い方を習得すれば、若干のニュアンスは違うものの他のタイプも扱うことができるようになります。
アーミング奏法の演奏動画
アーム・ダウンやアーム・アップ、アーム・ビブラートやクリケット奏法の演奏例を動画にしたので、やり方とサウンドを確認してください。
動画を再生するとスピーカーから音が出るので、ボリュームに注意してください。
まとめ:エレキギターでアーミング奏法!やり方と注意点、装置の種類
ここまで、アーミング奏法のやり方と注意点、装置の種類について解説してきました。
アーミング奏法のやり方
アーム・ダウン
アーム・アップ
アーム・ビブラート
クリケット奏法
4種類の奏法の動画
アーミング奏法の注意点
チューニングが狂う
不要な音が出る
アーミング奏法を実現する装置
シンクロナイズド・トレモロ・ユニット
ビグスビー・ビブラート・ユニット
フロイド・ローズ
アーミング奏法の演奏
アーミング奏法は、エレキギターだけができる特別なテクニックです。
ビブラート・ユニットがついてるエレキギターを手にしたら、ぜひ挑戦してみてください。
この記事があなたの一助になれば幸いです。
最後までお読みくださり、ありがとうございました。
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